ドケルバン病の治療と筋膜調整

こんにちは。肩です。
前回はドケルバン病あるあるということで、ドケルバン病で悩む人がよく訴える生活動作の痛みと整形外科テストについて紹介しました。
前回の記事▶︎ ドケルバン病あるあると整形外科テスト
あれから一週間経ちますが、その間にもドケルバン病のような痛みを訴える方を一人施術しました。
整形外科で働いている時は理学療法のオーダーがでることも少なく、担当は1症例でしたが、病院外で働くと結構悩んでいる人が多いなと実感しています。
今回はドケルバン病の治療と、筋膜の施術で効果的だったポイントを僕なりの解説を加えてお伝えしていきます。
ドケルバン病の一般的な治療
ドケルバン病の治療としては注射と固定、そして安静が指示されることが多いです。
腱鞘炎の時ももそうですが、手首や手指の安静って守れますか?
僕はなかなか厳しいと思っています。
家にお手伝いさんがいれば、安静にできるかもしれないですけど、普通はお手伝いさんいないですからね笑
ドケルバン病を担当した方で、安静の指示をうまく守ってもらったり、生活上負担を減らせるようなアイディアがある方は是非教えてください!
TwitterのDMで教えてくれると嬉しいです!▶︎ https://twitter.com/katalogpt
固定や安静以外にセラピストとして介入するのであれば、①母指以外の手指の機能を高める、②ADLで過度な手関節の尺屈位が生じないような指導などが挙げられます。
①母指以外の機能を高める
簡単な評価としては母指の屈曲や、対立運動を評価します。
母指の屈曲はIP関節の屈曲が乏しい症例が多いです。この場合 MP関節を過剰に屈曲しいてることが考えれますね。
対立運動は小指の対立ができず、母指の対立運動が過剰に観察できることがあります。
どちらの動きも、母指が代償として過剰な動きを強いられていないかをみています。
※注 母指の内転や屈曲自体で痛みがでるのがドケルバン病なので、上記を評価する際、機能低下が原因でできていないのか、痛みが原因でできていないのかはしっかり分けて考えましょう。
エクササイズとしては、母指内転筋をストレッチングしながら小指・環指を屈曲させたり、対立させたりします。
これも、母指外転することで痛みが出る場合はできないので、疼痛が軽減してからセルフエクササイズとして指導することが多く、早期から指導することは僕はほとんどないですね。
②ADLで過度な手関節の尺屈位が生じないような指導
パソコンの操作時や、お子さんの抱っこの際に尺屈が生じていないかチェックします。
子供抱っこに関しては、今子育て中なのでめちゃちゃ実感しています。
首が座って無い子を抱っこして顔をこっち向かせようとすると、尺屈と母指の内転めっちゃするんですよね笑
なかなか変えるのが難しいなと実感していますが、子育ては抱っこだけでなく、沐浴だったり、ママであれば授乳だったりと手首を使う頻度は多いので、子育て中のママの手首の痛みを担当したら、提案はしてみるべきだと思います。
ざっと考えられる、一般的な治療はこのくらいですかね。
母指以外の機能を高めたり、尺屈が生じないような動作指導は効果的ですが、痛みに関してはすぐ効果が出ない印象もあります。
そのような場合は、筋膜から介入すると良い結果がでることを多く経験します。
次からは少しドケルバン病と筋膜についてお話ししていきます。
ドケルバン病への筋膜調整の効果
1回の筋膜調整後、Eichhoff test(アイヒホッフテスト)が陰性化しました。
※お客様には動画の撮影・SNS等の投稿の許可を得ています
この方の一番の主訴は本やファイルを掴む動作(掌側外転)の痛みでしたが、その痛みもゼロになりました。
ファイルを掴む動作はドケルバン病のあるあるの一つとして前回紹介しました。
ドケルバン病に有効なポイント
上記の動画のお客様に施術したポイントの中で、過去の症例の経験を踏まえて効果的であったポイントを2つ紹介します。
①橈骨神経溝の近位部
掌側のポイントですが、ここの部分の筋膜の滑りが良くなるとFinkelstein test(フィンケルシュタインテスト)やEichhoff test(アイヒホッフテスト)が陰性化することを多く経験します。
図のように掌側の滑りが悪いと、筋膜は表層でつながっているため、伸筋支帯の第1区画を短母指伸筋腱と長母指外転筋腱が通る際の滑走障害が生じるのではないかと考えています。
パターンに当てはめるわけではないですが、経験上かなりのドケルバン病の方で、このポイントの筋膜の滑りが悪い人が多いです。
筋紡錘君かわいいっすよね。これはアナトミーイラストレーターのkeiちゃんに書いてもらいました。
触診方法
手関節より4横指のエリアの正中より橈側を幅広くチェックする
②橈側手根伸筋群の間の溝
ドケルバン病の原因筋となるのは短母指伸筋腱と長母指外転筋腱と言われていますが、橈側手根伸筋群上の滑りが悪さしていることがあります。
それぞれの筋肉は筋外膜で包まれており、その表層には前腕筋膜があります。
筋膜の基本的な解剖は▼下の図で簡単に復習してみてください!
もしくは、こちらの筋膜noteも参考にしてみてください!
この図の深筋膜が前腕筋膜として考えると、橈側手根伸筋群と短母指伸筋腱、長母指外転筋腱は離れていますが、前腕筋膜を介してお互い影響を及ぼしていると考えれます。
さらに離れているといえど、解剖学的に見ても短母指伸筋腱、長母指外転筋腱は橈側手根伸筋群を手関節の橈側で押さえ込んでいますしね。
触診方法
腕橈骨筋を触診して、そこから背側に移動して長橈側手根伸筋との溝の部分の動きの悪さをチェックする
この2ポイントをやれば治る!っていう魔法でもなんでもありません笑
ドケルバン病の患者さんを担当して、固定しか提案できない場合は、この2ポイントに固さが無いか是非チェックしてみてください。
筋膜の触診で気をつけること
筋膜の触診は、コリをグイグイ探すのではなく、滑りの悪いところを探します。
僕が臨床で大切にしていのは、押しても痛くないけども、動かすと痛いとレベルの圧です。
筋膜の施術って痛いというイメージが先行していて、とりあえず思いっきり押し潰している人が多いです。それは間違いです。
▼動画でイメージしてみて、触診してみてください!
まとめ
ドケルバン病の一般的な治療は安静や固定、医師の注射
セラピストとしては母指以外の手指の機能を高める、過度な手関節の尺屈位が生じないような指導
橈骨神経溝の近位部や橈側手根伸筋群の間の溝の筋膜の動きが悪いことがある
参考文献
岡村 俊,「第1背側コンパートメント症候群の評価をするコツ」理学療法ジャーナル2019年8月号,p.812-813,医学書院
Luigi Stecco・Carla Stecco,筋膜マニピュレーション 実践編 筋骨格系疼痛治療,医師薬出版株式会社,2011